東京地方裁判所 昭和51年(ワ)4675号 判決 1980年9月19日
原告 古川安子
被告 細井月子 外一名
主文
一 被告細井月子は、原告が別紙物件目録記載の不動産につき、一〇万分の一万二五五六の共有持分権を有することを確認する。
二 被告細井行男は、原告に対し○○通信機株式会社の株式八万四一二五株分(株主たる地位)を移転する義務のあることを確認する。
三 被告細井月子、同細井行男に対するその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用は、これを五分し、その四を被告両名の負担とし、その余を原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告細井月子は、原告が別紙物件目録記載の不動産につき一万分の一、三七三の共有持分権を有することを確認する。
2 被告細井行男は、原告に対し、被告細井行男が原告に対し○○通信機株式会社の株券九万一九九一株を引渡す義務あることを確認する。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
二 請求の趣旨に対する被告両名の答弁
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 原告及び被告細井月子(以下「被告月子」という。)はいずれも訴外亡相川久佐衛門(以下「久佐衛門」という。)の子であり、被告細井行男(以下「被告行男」という。)は月子の夫である。
2 右久佐衛門は昭和四七年五月五日死亡したが、同人の法定相続人は、長女訴外大谷実子(以下「大谷」という。)、二女被告月子、三女原告の三名であつた。したがつて、原告は久佐衛門の直系卑属たる相続人として遺留分を有し、右遺留分は六分の一である。
3 ところで、久佐衛門は、昭和四五年六月及び一〇月の二回にわたり大谷に対し合計金二〇〇万円を贈与し、また同年六月原告に対し金一〇〇万円を贈与した。さらに久佐衛門は、昭和四六年二月一日左記のとおり公正証書遺言をなした。
記
(一) 別紙物件目録記載の不動産(以下「本件土地」という。)を被告月子に遺贈する。
(二) ○○通信機株式会社(以下「本件会社」という。)の久佐衛門名義の株券六七万株を被告行男に遺贈する。
(三) ○○銀行○○支店久左衛門名義の定期預金債権一〇〇万円を大谷に遺贈する。
(四) ○○銀行○○支店久左衛門名義の定期預金債権一〇〇万円を原告に遺贈する。
(五) 現金等の残余がある場合には、一〇〇万円程度を原告の長女久美に遺贈する。
4 久左衛門の死亡時における財産は次のとおりであつた。
(一) 積極財産 合計金二二四万三〇四九円。
内訳
(1) ○○銀行○○支店久左衛門名義の普通預金債権金一五万三七三一円。
(2) 同銀行同支店同名義の普通預金債権金五四一八円。
(3) 郵便貯金 金七五万円。
(4) 現金 金五〇万円。
(5) 家庭用財産 金五〇万円相当。
(6) ○○通信機株式会社に対する未収給与債権一六万五三五二円。
(7) 前記3(三)の未収利子金五万三〇一円。
(8) 前記3(四)の未収利子金三万六五四七円。
(9) 久左衛門にかかる昭和四七年度所得税還付金金八万一七〇〇円。
(二) 消極財産 合計金一二八五万二六九一円。
内訳
(1)住民税 金二六万九四八〇円。
(2)○○○○医大病院未払金 金四八万一一四〇円。
(3)○○家政婦会未払金 金六万八六四〇円。
(4)○○銀行○○支店からの借入金 金一二〇三万三四三一円。
5 遺留分算定の基礎となる財産及び原告の遺留分は次のとおりである。
(一) 久左衛門が被告両名、原告及び大谷に遺贈した財産合計金八六一九万円。
(1) 本件土地の相続開始時の価額二二五五万円。
(2) 本件会社の久左衛門名義の株式六七万株の相続開始時の価額金六一六四万円。
(3) ○○銀行及び○○銀行の定期預金債権合計金二〇〇万円。
(二) 久左衛門が原告、大谷に生前贈与した財産合計金三〇〇万円。
(三) 本件会社から被告月子に支払われた久左衛門の弔慰金金一〇〇〇万円。
(四) 久左衛門の死亡時の財産
(1) 積極財産金二二四万三〇四九円。
(2) 消極財産金一二八五万二六九一円。
(五) 以上の財産合計金八八五八万三五八円が遺留分算定の基礎となる財産であるから、原告の遺留分額は、その六分の一にあたる金一四七六万三三九三円であるところ、原告は久左衛門から金一〇〇万円の生前贈与及び定期預金債権金一〇〇万円の遺贈を受け、さらに現存遺産から金一二〇万円を取得するので、原告が被告両名への遺贈により侵害されている金額は、金一一五六万三三九三円となる。
6 原告は、昭和四八年四月二五日東京家庭裁判所に遺留分減殺請求の調停を申立て、被告両名に対し、遺留分減殺請求権を行使した。
7 被告月子に遺贈された本件土地の価額二二五五万円と被告行男に対して遺贈された本件会社の株券価額六一六四万円との合計価額は八四一九万円となるから、原告は、本件土地と右株券につきそれぞれ八四一九万分の一一五六万三三九三に該る一万分の一三七三の割合で所有権を有するべきである。これは本件土地については、一万分の一三七三の割合の共有持分権、本件会社の株式については前記六七万株のうち九万一九九一株に相当する。
8 よつて、原告は、被告月子に対し、原告が本件土地について一万分の一三七三の共有持分権を有することを、また被告行男に対し、同人が原告に対して本件会社の株券九万一九九一株の引渡義務を負つていることの確認を求める。
二 請求原因に対する被告らの認否
1 請求原因1ないし3の事実はすべて認める。
2 請求原因4の前文の事実は否認し、同4(一)(1)ないし(9)の事実、同(二)(1)ないし(4)の事実は認める、但し、久左衛門の死亡時における消極財産は、右に原告の主張するものだけでなく、後記被告主張のとおり他にも存した。
3 請求原因5の事実のうち、同5(一)(1)ないし(3)、同5(二)、同5(四)(1)の各財産が遺留分算定の基礎となる財産であることを認め、右各財産の価額も、右財産のうち同5(一)(1)の本件土地を除き原告主張どおりであることを認め、同5(一)(1)の本件土地の相続開始時の価額は否認する。また同5(三)の本件会社から被告月子に支払われた弔慰金が遺留分算定の基礎となる財産に含まれるという点は否認する。また同5(四)(2)のうち、原告主張どおりの消極財産があることは認めるが、前記のとおり他にも債務が存する。同5(五)の事実は否認する。
4 請求原因6の事実は認める。
5 請求原因7の事実は否認する。
6 請求原因8は争う。
三 被告らの主張
1 本件遺留分算定の基礎となる財産及びその価額は次のとおりである。
(一) 積極財産
(1) 本件土地金一一六九万六四〇〇円
被告行男は久左衛門と本件土地の使用貸借契約を締結し、その期間を被告らが居住する限り使用できるものと定め、昭和四五年一〇月三〇日頃被告行男において本件土地上に家屋を建築し占有していたのであるから、被告月子が遺贈を受けた土地の価額は更地価額(坪三〇万円)の六割に相当する一一六九万六四〇〇円である。
(2) したがつて、右土地の価額に原告主張の株式、定期預金、現存遺産及び生前贈与分(請求原因5の(一)(2)、(3)、(二)、(四)(1))を合算すると、合計金八〇五七万九四四九円となる。
(二) 消極財産
(1) 本件会社からの借入金金四一六万四七〇八円。
(2) ○○○電気株式会社等に対する未払金金九〇万円。
(3) 株式会社○○○○等に対する未払金金四万円。
(4) 原告主張の住民税、病院、家政婦会への各未払金及び銀行借入金(請求原因4(二)(1)ないし(4))金一二八五万二六九一円。
右合計金一七九五万七三九九円。
(三) したがつて、(一)から(二)の差引合計金六二六二万二〇五〇円が遺留分算定の基礎となる財産である。
(四) 原告の遺留分は六分の一であるから、原告の遺留分価額は金一〇四三万七〇〇八円となる。したがつて、右価額から原告が生前贈与を受けた金一〇〇万円及び遺贈により受けるべき金一〇〇万円を差引いた金八四三万七〇〇八円が原告の減殺請求しうる額である。
2 被告月子の法定相続分は、相続財産の三分の一であるから金二〇八七万四〇一六円であるが、同被告は、本件土地の遺贈を受けたにすぎないところ、その評価額は前記被告ら主張(1(一)(1))のとおりであるから、法定相続分の範囲内なので、原告の遺留分減殺請求権行使の対象とはなり得ない。したがつて、原告は被告行男に対し、金八四三万七〇〇八円相当の本件会社株式につき減殺請求しうるだけである。
四 被告らの主張に対する答弁
1 被告ら主張のうち、1(一)(1)の本件土地の評価額、同1(二)(1)ないし(3)の消極財産及び同1(四)の事実は否認し、その余の事実は認める。本件の弔慰金は実質的に死亡退職金であり、少なくとも遺留分計算の基礎として計算されるべきである。
2 被告ら主張2の事実は否認する。
第三証拠関係
一 原告
1 甲第一号証及び同第二号証を提出した。
2 原告本人尋問の結果、鑑定人○○○○○の鑑定の結果を援用した。
3 乙第一号証、同第四号証の一、二は原本の存在、成立とも認め、その余の乙号各証の成立はいずれも不知である。
二 被告両名
1 乙第一号証、同第二号証、同第三号証及び同第四号証の各一、二を提出した。
2 被告両名各本人尋問の結果を援用した。
3 甲号各証の成立はすべて認める。
理由
一 請求原因1ないし3、同4(一)(1)ないし(8)、同4(二)(1)ないし(4)、同6の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、まず第一に遺留分算定の基礎となる財産及びその財産の相続開始時(昭和四七年五月五日)における価額について検討する。
1 まず積極財産につき検討するに、本件会社の久左衛門名義の株式六七万株の相続開始時における価額が六一六四万円であり、これと○○銀行及び○○銀行の定期預金債権合計金二〇〇万円、久左衛門が原告及び大谷に対し生前贈与した財産合計金三〇〇万円、久左衛門の現存遺産二二四万三〇四九円がいずれも遺留分算定の基礎となる財産であることは、当事者間に争いがない。
また、本件土地が遺留分算定の基礎となる財産であることは当事者間に争いがないものの、右土地の相続開始時における価額につき争いがあるので、この点につき判断する。
鑑定人○○○○○の鑑定の結果によれば、本件土地の相続開始時における更地価額は二二五五万円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はないが、被告らは、被告月子が久左衛門から遺贈を受けた本件土地上には被告行男のために使用貸借権が設定されているから更地の六割の価額をもつて評価すべき旨主張するので以下検討する。
成立に争いがない甲第一号証、被告両名各本人尋問の結果によると、久左衛門は、妻の死後、昭和四二年頃から、被告ら夫婦と同居を始めたこと、その後久左衛門は昭和四三年頃から入、退院をくり返すようになつたこともあつて、昭和四五年頃被告行男に対し、今まで自ら経営して来た本件会社を代つて経営してもらいたい旨の要請をなし、その結果、被告行男が本件会社の代表取締役に就任したこと、その後、久左衛門は被告らに対し、本件土地を提供するから居宅を建てて自分と同居してほしい旨を依頼したため、被告行男は右要望に答え昭和四五年一〇月頃本件土地上に家屋を建て、被告らは、久左衛門と同居を始めたこと、久左衛門はその約四か月後である昭和四六年二月一日遺言公正証書をもつて本件土地を被告月子に遺贈し、翌四七年五月五日死亡するに至つたこと(同人の死亡の日時は当事者間に争いがない。)が認められ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
右認定のとおり、久左衛門は、被告行男に本件土地上に家屋を建築してもらい、そこで被告らと同居することを希望して、被告行男に本件土地の提供を申し出、同人は右申し出に応じて右土地上に家屋を建築したものであるが、久左衛門の被告行男に対する右土地の提供は、単なる恩恵的なものではなく、自ら同人が建てる家屋に居住して被告らに面倒をみてもらうという対価的な意図をもつてなされたことからすると、久左衛門が本件土地の提供を申し出た際、同人と被告行男との間には、本件土地の使用貸借の合意が成立したものとみるのが相当である。そこで右使用貸借権の価額につき検討するに、右使用貸借権は、家屋建築の目的をもつて設定されたものであること、その他久左衛門と被告行男との身分関係、右使用貸借権の存続期間等諸般の事情を考慮すると、右使用貸借権の価額は本件土地の更地価額の一割(金二二五万五〇〇〇円)をもつて評価するのが相当である。したがつて、本件土地の相続開始時における価額は、右更地価額から被告行男のために設定された使用貸借権の価額を控除した価額、即ち、金二〇二九万五〇〇〇円と評価するのが相当である。
次に、本件会社から被告月子に支払われた弔慰金が遺留分算定の基礎となる財産に含まれるか否かにつき検討する。
前記認定事実及び当事者間に争いのない事実に原告、被告両名各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると、久左衛門は本件会社を設立し、以来右代表者として会社の経営にあたつて来たこと、久左衛門は妻の死後被告ら夫婦と同居を始めたが、昭和四三年頃から入、退院をくり返すようになつたこともあつて、同四五年頃娘婿である被告行男に本件会社の経営を依頼し、その結果被告行男は、本件会社の代表取締役に就任し、右経営にあたるようになつたこと、久左衛門は、昭和四七年五月五日死亡したが、本件会社は、右弔慰金を支給することになり、取締役会を開いて遺族の中から久左衛門と同居していた被告月子を右受取人と決定し、同女に弔慰金金一〇〇〇万円を支給したことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
通常、弔慰金は、主として死亡退職金的性格のものか又は遺族の生活保障的性格を有するものであるが、本件における久左衛門は本件会社の代表取締役として終始会社経営にあたつて来たものであり、かつ、右死去に際して支払われた弔慰金がかなり高額であることを鑑みると、久左衛門の生前の会社経営に対する功労報酬的性格をも帯有しているものと考えられる。したがつて他の相続人間の公平も考慮すべきであるから、右弔慰金は遺贈に準ずるものとして民法九〇三条の特別受益にあたるものと認めるのが相当である。
そうであれば、本件会社から被告月子に支払われた弔慰金は遺留分算定の基礎となる財産に含まれることとなる。
2 次に消極財産につき検討するに、請求原因4(二)(1)ないし(4)記載の債務が遺留分算定の基礎となる財産から控除すべき債務であることは当事者間に争いがない。
そこで、被告ら主張1(二)(1)ないし(3)記載の債務が右控除すべき債務にあたるか否かにつき検討する。成立に争いのない甲第二号証、乙第一号証、同第四号証の一、二(いずれも原本の存在を認める)、被告行男本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる乙第二号証、同第三号証の一、二、被告行男本人尋問の結果によれば、本件会社は、久左衛門が右代表取締役就任中に生じた使途不明金四一六万四七〇八円を帳簿上仮払いとして処理して来たが、同人の死亡にあたり右金員を同人の会社に対する債務として計上したこと、税務署も右債務を久左衛門の個人債務として容認したこと、久左衛門は、死亡前訴外○○電気株式会社の倒産に際して、右債権者委員長として訴外○○○電気株式会社等に配当すべき金員九〇万円を保管していたこと、被告らは、久左衛門の死後、同人の葬式代として株式会社○○○○等に四万円を支払つたこと、久左衛門の遺言執行者として東京家庭裁判所から選任された○○○○弁護士は、久左衛門の財産目録を作成したが、右目録には、負債として、請求原因4(一)(1)ないし(4)記載の債務のほか、被告主張1(二)(1)ないし(3)記載の債務が計上されていることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
以上の事実からすると、久左衛門は、死亡にあたり本件会社に対し金四一六万四七〇八円の債務を、○○○電気株式会社等に対し金九〇万円の債務を負担していたことが認められる。したがつて、右両債務は、遺留分算定にあたり控除さるべきである。
次に、右認定事実によれば被告らは、葬式代として金四万円を支出したことが認められ、被告らは右債務も遺留分算定にあたり控除すべき旨主張するが、葬式費用は香典を取得して葬式を主宰した被告らにおいて負担すべきものと解するのが相当である。
3 以上より遺留分算定の基礎となる財産は次のとおりである。
(一) 積極財産
(1) 本件土地 金二〇二九万五〇〇〇円
(2) 本件会社株式六七万株 金六一六四万円
(3) 定期預金 合計金二〇〇万円
(4) 生前贈与分 金三〇〇万円
(5) 現存遺産 金二二四万三〇四九円
(6) 弔慰金 金一〇〇〇万円
以上合計 金九九一七万八〇四九円
(二) 債務合計
(1) 住民税 金二六万九四八〇円
(2) ○○銀行からの借入金 金一二〇三万三四三一円
(3) 本件会社からの借入金 金四一六万四七〇八円
(4) ○○○○医大病院未払金 金四八万一一四〇円
(5) ○○家政婦会未払金 金六万八六四〇円
(6) ○○○電気株式会社等未払金 金九〇万円
以上債務合計 金一七九一万七三九九円
(三) 以上差引合計 金八一二六万〇六五〇円
4 したがつて、原告の遺留分は六分の一であるから、その遺留分価額は金一三五四万三四四一円(小数点以下切捨)となるところ右価額から原告が生前贈与を受けた金一〇〇万円及び遺贈により受けるべき金一〇〇万円を差引いた金一一五四万三四四一円が原告の減殺請求しうる額である。
三 したがつて、原告は金一一五四万三四四一円につき被告らに対し減殺請求すべきことになるが、被告らは、被告月子の法定相続分は金二〇八七万四〇一六円であつて同女は右法定相続分の範囲内で遺贈を受けたにすぎないので遺留分減殺の相手方足りえない旨主張するが、仮に右立場にたつとしても、被告月子が取得した本件土地及び弔慰金を評価すると金三〇二九万五〇〇〇円になり同女の法定相続分を超えるばかりでなく、被告らは、遺留分減殺の基礎となる財産を基準として法定相続分を計算しているのであるから、右主張は採用の限りでない。
そこで、原告は、前記金一一五四万三四四一円につき、自己の遺留分を超えて遺贈を受けている被告月子及び被告行男に対して減殺請求すべきであるから、まず同人らに対する遺贈及び遺贈に準ずる弔慰金の支給につき減殺すべきところ、右各目的物の価額の割合に応じて減殺すると、次の算式のとおり原告は、本件土地(金二〇二九万五〇〇〇円)、株券(金六一六四万円)、弔慰金(金一〇〇〇万円)につきそれぞれ一〇万分の一万二五五六の割合で所有権を有するものである。(11543441÷(20295000+61640000+10000000) = 0.12556)
(小数点6桁以下切捨)したがつて、原告は、本件土地につき一〇万分の一万二五五六の共有持分権を、また本件会社株式につき八万四一二五株(小数点以下切捨)の権利を取得し、さらに支給された弔慰金のうち一二五万五六〇〇円を取得する権利を有することになる。
四 よつて、原告の本訴請求のうち、被告月子に対し、原告が本件土地につき一〇万分の一万二五五六の共有持分を有することを確認し、また本件会社は株券を発行していないので被告行男に対し、同人が原告に本件会社の株式八万四一二五株分(株主たる地位)の移転義務のあることを確認する(原告の請求はこのような内容のものであると解することができる。)範囲で理由があるからこれを認容し、その余の請求は失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条一項を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 牧山市治 裁判官 古川行男 滝澤雄次)
別紙物件目録<省略>